2023.04.24 (更新日:2024.03.26)

フィールドセールス

プロダクト営業を脱却しアカウント営業へ!アカウント営業に必要なスキルや向上の秘訣、意識したいポイントまで幅広く解説!

営業手法には、ルート営業や提案型営業など様々なセールス手法が存在しますが、近年注目されているのがアカウント営業という手法です。アカウント営業とは、特定の顧客とビジネスの課題を共有し、解決策を提案し続ける営業手法のことで、長期的なスパンで顧客ロイヤリティを発展させていく戦略的な営業活動を指します。

ここでは、アカウント営業の概要や従来の営業手法との違い、さらにはアカウント営業を実践する上で知っておきたい知識や情報について詳しくご紹介します。アカウント営業を検討している方や営業結果がなかなか出ずに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

アカウント営業とは

アカウント営業とは、対象顧客の組織や事業に関する情報を深く幅広く聞き出し、その後に課題解決の方法を提案する営業手法です。ターゲットとなる見込み顧客を絞り、その限られた見込み顧客との関係性を強化した上で、ソリューションを提案していきます。

アカウント営業では、対象となる見込み顧客が限られる分、時間をかけて事業状況や組織構成などの様々な情報を収集しながら、顧客との関係性を構築していきます。長い時間をかけて関係性を構築した上で、提案を受けることで商談もスムーズに進められるのが特徴です。

プロダクト営業からアカウント営業への移行が進んできている

類似商品やサービスが溢れている飽和状態の状況の中で、単に商品を売り込む「プロダクト営業」のような従来の営業スタイルではなく、顧客との関係性に重きを置いたアカウント営業が注目を集めています。

アカウント営業を実践するメリットは次の通りです。

▽アカウント営業を実践するメリット

・顧客の信頼度が高まりやすい
・営業成果が出やすく利益を出しやすい
・顧客流出のリスクを最小限に抑えられる
・営業ノウハウや顧客対応ノウハウを蓄積できる

顧客とのコミュニケーションを重ねて長期的なサービスを提供するアカウント営業では、顧客との信頼関係が厚くなります。その上で、顧客にとって最適な提案をするため、結果として営業成果を出しやすい営業手法と言えるでしょう。一度アカウント営業の契約が決まれば、他社に顧客を奪われるリスクもほとんどありません。

さらに、顧客一人にかける時間が長くなることで、営業や顧客対応のノウハウを蓄積できるのも大きなメリットです。蓄積した知識やノウハウは、似たような問題や課題を抱える企業の営業活動に活かすことができるでしょう。

関連記事:商品売り込み型の営業スタイルに限界がある理由とは?

アカウント営業の基本的な手順

アカウント営業は次のような手順で営業活動を進めていきます。

▽アカウント営業の基本的な手順

1. ビジョンを明確にする
2. ゴールの設定
3. 課題の抽出・仮説の構築
4. アカウント戦略の提案
5. ソリューションの提案
6. サービスの提供
7. 顧客との関係性拡大

顧客との信頼関係を構築しながら、ビジョンやゴールを設定していきます。そして、顧客の抱える課題や問題についてしっかり考察し、アカウント戦略の提案をしていくのです。

アカウント営業は、長期的な信頼関係を構築していく営業手法ですので、サービスを提供して終了するのではなく、顧客との関係性を拡大していくことにも注力する必要があります。

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従来の営業スタイルとの比較

アカウント営業のプロセスや実践するメリットを理解できたところで、ここからは従来の営業スタイルとの違いについてご紹介します。「御用聞き営業」「ソリューション営業」、そして「プロダクト営業」の3タイプの特徴を見ていきましょう。

ルート営業

ルート営業とは、別名「御用聞き営業」のことで、既に取引したことのある既存顧客に対して営業活動をしていく手法です。営業担当者ごとに顧客担当を持ち、深耕開拓していきます。

決まった顧客に対してアプローチするという点ではアカウント営業と同じスタイルではあるものの、アカウント営業は、既存顧客に限らず、新規顧客に対してもアプローチをかけていく点が大きく異なります。

さらに、ルート営業は、営業活動を継続することで結果的に顧客情報が集まり、関係性も構築されていくのに対し、アカウント営業では顧客情報の収集や関係性の構築を前提として活動をしていくのも大きな違いです。

ソリューション営業

ソリューション営業とは、別名「提案型営業」のことで、見込み顧客の課題やニーズをヒアリングした上で、自社製品やサービスを含めた解決策を提案する営業手法です。

アカウント営業の手法と似ているように感じますが、両者の明確な違いは提案までの期間です。

一般的なソリューション営業は、見込み顧客との関係構築をある程度した段階で提案を実施します。一方で、アカウント営業は見込み顧客に関する情報収集をはじめ、関係性強化を図ることから、提案までにある程度の期間が必要です。

関連記事:ソリューション営業についてはこちらの記事で詳しく解説しています

プロダクト営業

プロダクト営業とは、自社商品やサービスの魅力をアピールして、自社の新製品やサービス、そして顧客のニーズに合った商材を提案する営業手法のことで、商品力によって競合他社との差別化を図ると特徴です。

御用聞きスタイルのルート営業は受け身に近い営業スタイルなのに対し、プロダクト営業は顧客のニーズを把握しながら、最適な商品を提案しなければなりません。そのため、ルート営業よりも広い知識やスキルが必要とされています。

プロダクト営業は、ざっくりとしたターゲティングとなる傾向にあり、リードタイムも短いため、成功率が低い傾向にあります。一方で、アカウント営業はターゲットを具体的に絞り込んで顧客との関係を構築して営業提案をするため、成功率の高いのが特徴です。

そのため、継続的に安定した営業利益を上げるためには、商品力で差別化を図るプロダクト営業から脱却し、アカウント営業への移行を推進していくのが賢明です。

アカウント営業で求められるスキル

アカウント営業を実践する上で様々なスキルが求められます。具体的にどのようなスキルがあることで、成約率が高まるか把握しておきましょう。

仮説立案能力

顧客が抱える経営課題や事業課題がどこにあるかを見極め、仮説を立てる「仮説立案能力」が求められます。

顧客の現状を知ることはもちろん、課題の本質的でかつ潜在的な原因を把握しなければ、解決策を提示できません。ヒアリングした内容をただ羅列して判断するのではなく、得られた情報をもとに、より深いポイントについての仮説を立てる能力が必要です。

仮説立案能力を高めるためには、とにかくいくつもの仮説を立てて、それぞれの可能性について探る経験を積む必要があります。

関連記事:仮説思考を高めるコツについてはこちらの記事で詳しく解説しています

情報収集能力

アカウント営業を実践する上で顧客の抱える課題に対する仮説を立てるためには、広範かつ多角的な情報収集能力が必要です。顧客の現状や課題をよく理解した上で、営業の提案を行うことで、より受注率が上がり、高単価の提案も受け入れられるようになるでしょう。

マーケティングスキル

マーケティングに関する知識やスキルを習得することで、アカウント営業において飛躍的に活躍できる可能性が高まります。

マーケティングスキルを身につけることで、販売戦略を決定するマーケティングの視点から顧客に対して提案できるようになるだけでなく、企業戦略を打ち出すマーケティング部門と協力し合いながら営業活動を進めることが可能です。

企業として持っている販売ビジョンにより近しい営業活動を実現でき、結果として成約率や生産性の向上につながっていく可能性があります。

ヒアリング能力

営業活動においては、顧客の抱える課題や問題を正確に把握し、それらを解決するための商品やサービスを提案することが求められます。そのため、顧客がどのようなことに対して不自由さや課題を感じているかをしっかりと把握することが重要です。

すべての顧客が自社の課題やニーズを整理して伝えられる訳ではありません。そのため、商談中は顧客の話に耳を傾け、課題のポイントとなる内容を抽出して理解するスキルが必要です。

営業力を高めるためには、顧客の話にしっかりと耳を傾け、傾聴する姿勢を大切にしてください。

関連記事:営業パーソンに必須の質問力の高め方はこちらの記事で詳しく解説しています

プレゼン力・交渉力

アカウント営業では顧客の課題に対して最適な提案をしていきますが、その際の重要となるのがプレゼン力や交渉力といったスキルです。

顧客満足度を高めるためには、顧客の要望をできる限り反映することは重要です。しかし、無理な価格交渉や仕様変更などの要求は、自社の利益の確保が困難になるだけでなく、顧客の課題解決をするためには対応できない場合もあるかもしれません。

そのため、顧客側と営業側の双方が納得できる条件を提示するためには、プレゼン力や交渉力をブラッシュアップする必要があるのです。

関連記事:提案力を高めるコツはこちらの記事で詳しく解説しています

コミュニケーション力

顧客との良好な関係性が重要となるアカウント営業では、高度なコミュニケーションスキルが求められます。コミュニケーションスキルは、トーク力や社交性があれば高いというわけではありません。

アカウント営業で必要とされる高度なコミュニケーションスキルとは、顧客側が話しやすく感じるように、会話のリズムやバランス、方向性を上手にコントロールする能力を指します。そのため、営業側から伝えたいことはあくまでも端的に済ませ、顧客からの言葉をしっかりと引き出すように心がけることが大切です。

思わず話したくなるような雰囲気づくりはもちろん、相手の言葉をしっかりと汲み取り、聞き取る習慣を身につけていきましょう。

アカウント営業を高めるために

アカウント営業を効果的に実施するために重要なポイントは次の通りです。

・成功事例の共有会を開催
・ITツールを活用しナレッジの見える化
・外部研修会社の活用

それぞれのポイントについてご紹介します。

成功事例の共有会を開催

それぞれの営業担当者が経験した成功事例に関する共有会を定期的に開催することで、チームとしてノウハウや知識を把握、共有できます。それぞれの社員の学習意欲を刺激し、成長の機会を創出することで、業務に対するモチベーション向上を図れるでしょう。

ITツールを活用しナレッジの見える化

アカウント営業を成功させるためには、営業活動を可視化するITツールの活用が必要不可欠です。

成功事例や失敗事例はもちろんのこと、営業ノウハウの共有が盛んとなり、組織全体の生産性や営業力向上に大きく寄与する可能性があります。

営業活動に活用できるITツールとして、SFAやCRMなどがあります。自社の目的や用途、そして課題に合わせたツールを選定することが大切です。営業活動における課題を明確にした上で、課題解決につながるツールも導入もぜひ検討してください。

外部研修会社の活用

自社でプロダクト営業に関する知識やノウハウがない場合、研修や教育システムを内製することは難しいかもしれません。その場合は、外部の研修会社への依頼を検討する必要があります。

自社とは異なる考え方や自社にはないノウハウや知識に触れられるため、アカウント利業に関する体系的な教育を受けられるでしょう。

自社のスタッフを使って研修を行う必要がないため、研修や教育に向けた準備や運営をする手間も省けます。

アカウント営業を進めていく上で意識したいこと

アカウント営業を効果的に実践していくために、意識すべき3つのポイントをご紹介します。

信頼できるパートナーとしての立場を作る

アカウント営業を効果的に実践するためには、顧客との良好な関係性が必要不可欠です。

顧客との関係性を構築できていない状態で情報を深掘りしようとしても、必要な情報は収集できません。一方、顧客との関係性が良ければ、顧客もリラックスした状態で話をしやすくなるため、より多くの情報を集められます。

ヒアリングの実施や連絡をこまめに行うことで、顧客との関係性が強化され、結果として信頼できるパートナーの立場になれるはずです。潜在的なニーズに関する調査も行えるようになり、より効果的にアカウント営業を実現できるでしょう。

顧客情報は適切かつ最新の状態に管理する

アカウント営業では、顧客の様々な情報を管理しなければならないため、より徹底した情報管理が求められます。顧客情報を適切に管理できていないと顧客からの信頼は一気に下がり、顧客ロイヤリティが低下しかねません。

顧客から得た情報は、取りこぼすことなくすべて保管・管理することはもちろん、大切な情報が外部に漏れないようにセキュリティ対策の見直しや管理方法を統一するなど、万全な管理体制を整えることが大切です。

このように、顧客管理を適切に管理することは、仮説構築やヒアリングに役立つだけでなく顧客関係の強化にも活かせる重要事項です。

課題を仮定重要度・緊急度で仕分けて対応する

顧客からの情報分析によっていくつか課題が見えてきた場合は、顧客企業内での重要度と緊急度の2つの軸で分類して対応していくことが大切です。

課題と一言で言っても様々な種類があり、課題によって重要度も緊急度も大きく異なります。そのため、アカウント営業を実践する際は顧客からの情報を収集しながら、それぞれの課題の緊急度と重要度を把握してください。

既に競合他社が入り込んでいる場合や新規営業に対してガードが堅い顧客の場合は、なかなか情報収集ができない可能性もあります。その場合は、質問力や価値訴求力を意識したヒアリングを実行していきましょう。

【まとめ】アカウント営業は顧客満足度の向上や事業発展へのカギ

アカウント営業は、顧客の信頼度が高まりやすく、営業成果が出やすく利益を出しやすい営業手法として注目されています。今回ご紹介したアカウント営業の基本や効果を理解したうえで自社の営業活動をアカウント営業へとシフトさせていき、顧客満足度の向上や事業の発展につなげてみてはいかがでしょうか。