2023.09.19 (更新日:2024.04.02)
顧客分析とは?分析手法やメリット、押さえておきたいポイントまで深く解説!
顧客1社ずつと強い信頼関係を築くBtoB営業において、顧客分析は欠かせないプロセスの一つです。顧客を分析することで、自社にとって最適な戦略やスタイルでリソースを活用できるでしょう。
そこで、本記事では顧客分析の概要をはじめ、その必要性やメリット、さらには、フレームワークを用いながら具体的な分析手法も解説します。顧客分析する際の注意点についても併せてご紹介しますので、今後の売上アップのためにぜひお役立てください。
目次
顧客分析とは
企業が経営戦略を立案する際には、自社の現状を深く理解する必要があります。これには、自社の製品やサービスの特性、経営資源、組織文化などの内部要素の分析が欠かせませんが、それだけでは十分ではありません。市場動向、国内外の政治・経済の情勢、競合他社の動きなど、自社を取り巻く外部環境の分析も重要です。これらの要素を総合的に分析することで、企業は自社の強みと弱みを明確にし、将来の方向性を見据えることができます。
その中でも特に重要なのが「顧客分析」です。顧客分析とは、大雑把に言えば企業が自社の製品やサービスを購入する顧客のニーズや行動、価値観などを深く理解することを指します。この際、顧客の購買履歴、満足度調査、フィードバックなどのデータ分析が必要です。
ここでは、顧客理解を深めるために重要な「顧客分析」の定義や目的についてご紹介します。
顧客分析の定義
顧客分析とは、自社の顧客の属性や購入履歴などを分析し、顧客に関する理解を深めるプロセスです。購買率や顧客満足度を改善するために行う分析を行いますが、その他にも以下のような項目を分析対象とします。
・顧客の属性(性別、居住地、年代など)
→顧客の基本的な背景を理解し、ターゲットセグメントを特定するため
・アクション履歴(顧客に行ったマーケティング施策、顧客との商談内容など)
→過去のマーケティング活動の効果を測定し、今後の戦略に反映させるため
・購買履歴、取引履歴(商材、売上金額/契約金額など)
→顧客の購買傾向を把握し、クロスセルやアップセルの機会を見つけるため
・顧客の課題、ニーズ
→顧客の潜在的な要求を理解し、解決策を提供するため
・顧客の趣味嗜好
→製品やサービスのカスタマイズに役立てるため
・購買プロセス、意思決定プロセス
→顧客が購買に至るまでのプロセスを理解し、効果的なタッチポイントを設定するため
・顧客満足度(顧客エンゲージメントやNPSなども含む)
→サービスの品質を評価し、改善点を見つけるため
これらを総合的に分析することで、自社の顧客の趣味嗜好や購入プロセスなどの理解を深めていきます。顧客分析は、マーケティング戦略の策定や製品開発の方向性を決定する上で欠かせない要素です。
顧客分析の目的
顧客分析の主な目的は、顧客のニーズや行動を正確に把握し、それに基づいて最適なサービスや商品を提供することです。その結果、自社の業績アップに繋がります。顧客の属性や行動データなどを徹底的に分析し、ニーズにマッチした商品やサービスを提供することで、売上向上に大きく寄与するでしょう。
その他にも、顧客分析を通して、新しい市場の機会を発見したり、競合との差別化を図ったりするための情報を得ることも可能です。
例えば、顧客があまり満足していないポイントを発見することで、新製品の開発に対する方向性を見つけることができるかもしれません。また、競合との差別化を図るために、顧客の評価やフィードバックを活用して、サービスの質を向上させる取り組みも可能です。
このように、顧客分析は多岐にわたって企業の成長戦略を支える重要なプロセスであると言えるでしょう。
関連記事:潜在ニーズの見つけ方とは?お客様のウォンツから本当の目的を引き出す質問方法を徹底解説!
顧客分析の必要性
企業が売上を伸ばすためには、過去のデータや市場の状況などを踏まえた根拠のある取り組みが必要不可欠です。闇雲に営業活動をしても、経費が嵩んでしまうだけで、売上向上には繋がりません。
売上を確実に上げるためには、顧客の特性や思考を知らなければならず、顧客分析が欠かせない時代となっていることを忘れてはいけません。ここからは、顧客分析の必要性についてご紹介します。
現状の施策の効果を把握できる
顧客の行動を現在の施策のタイミングと合わせて分析することで、現状をわかりやすく把握できます。
例えば、既存顧客に関するデータを分析することで、現状のアプローチ方法やマーケティング施策の効果を客観的に確認でき、営業プロセスやマーケティング手法の見直しが可能です。不要なコストを削減し、より効果的な施策を立案できるでしょう。
商品とニーズが合っているかを確認できる
顧客分析は、自社の精神やサービスが顧客のニーズに合っているかを確認するうえでも非常に有効な手段です。売れ行きが好調だからといって、必ずしも顧客のすべての要望をかなえているとは限りません。他に類似する商品がないために、仕方なく購入している可能性もゼロとは言えないでしょう。このようなケースの場合、競合他社によってより魅力的な商品がリリースされた際に、一気にシェアを奪われてしまう危険性があります。
顧客ニーズを的確に把握し、提供中の製品やサービスとの不一致を見つける努力が必要です。
顧客のニーズを深く理解できる
顧客分析を通して顧客のニーズを正確に理解し、顧客ファーストの製品やサービスを提供することも、顧客分析を行うべき理由の一つです。
まず、企業と顧客が思う「良い商品・サービス」が異なるケースが多く存在することを認識しなればなりません。顧客のニーズは多種多様であり、特に近年は価値観の多様化やタッチポイントの複雑化など、マーケティング活動のハードルが非常に高くなっているのが現状です。
顧客データを多角的に分析することで、狙うべきターゲット層を特定できたり、営業活動の方向性を定められたりするなど、マーケティング活動や営業活動の精度を高められます。また、潜在的なニーズを発掘できれば、他社にはない独自の商品やサービスを生み出すことができ、市場において優位なポジションを築けるでしょう。
関連記事:顧客課題はどうやって見つける?顧客課題の種類や見つけるためのポイントについて解説!
顧客分析を行うメリット
顧客分析を行う2つのメリットをご紹介します。
マーケティング施策の改善を図ることができる
顧客分析から得られた情報は、それぞれの部門や部署における戦略立案に役立てられます。具体的には、マーケティング全体の戦略や営業戦略、さらにはカスタマーサポート戦略などにも活用することが可能です。特に、ターゲットの抽出はもちろん、顧客ニーズの理解、さらにデータを基にした多角的な視点でのマーケティング施策の検討などのプロセスにおいて大いに活用できるでしょう。
売上の伸び悩みに課題を抱える企業は、まずは顧客分析に力を入れた上で戦略を見直すことをおすすめします。
業績のさらなる向上に起因できる
顧客分析を行うことで、自社製品やサービスの開発・改良が進み、より効果的な戦略や策定を立てられれば、最終的に売上アップの可能性が高まります。
これまで把握していなかった顧客ニーズを理解して、ニーズに合わせた商品やサービスを提供することで、リピート率の向上やアップセル・クロスセルを狙えるようにもなるはずです。その結果、業績の底上げが期待できるようにもなるのです。売上アップを実現するためにも、徹底した顧客分析を実施していきましょう。
関連記事:クロスセルとは?メリットや手法、意識したいポイントや成功事例まで幅広く解説!
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顧客分析を行うための分析手法を解説
顧客分析の方法は多岐にわたります。一つの方法に限定するのではなく、複数の分析手法を目的に応じて使い分けることで、より精度の高い顧客分析が可能です。
ここでは、顧客分析に使われる代表的なフレームワークや分析手法をご紹介します。
RFM分析
RFM分析とは、次の3つの指標で顧客を分類するフレームワークです。
・Recency(最新購入日):購入日が最近であるほど高いスコア
・Frequency(購入頻度):購入頻度が多いほど高いスコア
・Monetary(累計購入金額):購入金額の合計が高いほど高いスコア
それぞれの項目は関連性があるため、これら3つの指標のスコアが高ければ高いほど優良顧客とみなされます。顧客の貢献度だけでなく、購買力を分析するのに特化した手法です。
セグメンテーション分析
セグメンテーション分析とは、顧客をそれぞれの属性によって細かく分類し、共通点を洗い出した上でグルーピングする分析手法です。
RFM分析や後述するデシル分析では、購入に関する数値のみを分析しますが、セグメンテーション分析ではそれ以外のデータも活用するのが特徴です。
顧客の属性や購入履歴などのデータを用いて顧客を細分化することにより、類似性の高い顧客をグルーピングでき、それぞれのグループに有効なマーケティング施策を打ち出せます。顧客分析の中でも比較的簡単な手法であることから、顧客分析を初めて導入する企業におすすめです。
行動トレンド分析
行動トレンド分析とは、特定シーズンに購買行動している顧客に限定し、共通点や特徴を分析するフレームワークのことです。
季節や曜日、時間帯など、購買履歴のデータを基にして、顧客の行動を分析します。シーズンや顧客特性によるトレンド予測が可能なため、効果的なタイミングでキャンペーンを実施したり、PRを展開したりなどの施策を実現できるでしょう。
CTB分析
CTB分析は、次の3つの軸を用いて顧客を分類する分析手法です。
・Category(カテゴリ)
・Taste(テイスト)
・Brand(ブランド)
上記の要素から、顧客の趣味嗜好やニーズを把握し、傾向が類似している顧客同士をグルーピングし、それぞれの顧客グループのニーズに合わせた販売戦略を展開していきます。3つの軸を掛け合わせて顧客を分類することによって、高精度で顧客の好みを把握できるでしょう。
デシル分析
デシル分析とは、顧客の購入金額に応じてグループ分けする分析手法です。デシルとは、ラテン語で「10等分」という意味を持つ言葉で、全顧客を10つにグルーピングします。
具体的には、購入金額の高い順にソートし、10グループに分け、それぞれのグループの合計金額を算出します。それぞれのグループの購入金額合計を比較しながら、自社の売上における比率、さらには貢献度の高いグループを分析していくのです。上位グループが必ずしも優良顧客やリピーターではないため、分析する際は十分注意しなければなりません。
パイプライン分析
パイプライン分析とは、営業活動における一連の業務フローをパイプに見立てて、営業活動におけるプロセスを可視化し、課題を把握する分析手法です。営業活動におけるボトルネックを認識し、対応すべき改善策を考案するために活用されます。
問い合わせの対応方法からクロージングまで、営業活動における業務フローのどこに問題があるのか一目瞭然に把握できるため、テコ入れすべきポイントが明確になります。
LTV分析
LTVとは、Life Time Value(ライフ・タイム・バリュー)の頭文字を合わせた略語のことで、日本語では顧客生涯価値と呼ばれる指標です。顧客と企業の長期的な関係性の中で、一人または一社の顧客から得られる利益または売上の総額を指します。
LTV分析とは、算出したLTVの値を基に、顧客との関係性を分析し、収益の最大化や利益構造の明確化、コスト面の把握など、営業活動における長期的な見通しを予測する手法です。
顧客との長期にわたって良好な関係を維持するためにも、最小のコストで最大の利益を得るためにも、自社の商材やサービス形態に応じて適切にLTV値を算出し、分析してください。
AIツールを活用して分析
顧客分析を行う際は、フレームワークに加えて、AIツールを活用する方法もおすすめです。数あるツールの中でも、特におすすめなのがSFAやCRMなどの顧客情報管理システムです。顧客情報のみならず、購入履歴や営業履歴も蓄積されていくことから、複雑な顧客分析も実施できるのが大きなメリットと言えるでしょう。
特に、マーケティングや営業、カスタマーサポートなど、様々な部門において顧客との接点を持っている場合は社内に顧客情報が散在しがちです。SFAやCRMなどを活用することで、最新の顧客情報を集約、共有し、多角的に顧客分析を行うことをおすすめします。
関連記事:SFA(営業支援システム・ツール)とは何か?基礎知識や導入メリット、CRMやMAとの違いを紹介
関連資料:SFA活用マネジメントガイド SFAを組織に定着させ活用するためのステップについて解説
顧客分析を行う上でのポイント
顧客分析を成功させるために意識したい4つのポイントを解説します。
「顧客」の定義を明確に
顧客分析を進める際は、顧客の定義が必要不可欠です。自社の商品やサービスを利用するのは、どのような層の人たちなのかを明確にすることから始めてください。
具体的には、顧客情報を収集し、その上でターゲットやペルソナを設定します。ターゲットとは、年齢や性別、居住エリアなどの属性を基本としたマーケティング対象です。一方、ペルソナは、ターゲットよりも詳細な情報を設定する特徴があります。職業や年収、家族構成やライフスタイル、趣味など、特定の人物像に関する仮説を立てて設定してください。
顧客のイメージを具体化することによって、商品の販売方法や訴求方法、アプローチの仕方が的確となり、商品自体の改善やアップデートも可能です。
市場規模と成長性を把握する
市場規模とは、ある業界の市場の大きさや年間総取引額のことを意味します。この市場規模や市場における成長性を把握することで、売上予測はもちろん、市場動向をある程度分析できるでしょう。
市場規模や成長性を分析するフェーズにおいて失敗してしまうと、その後のマーケティング活動がすべて無駄になってしまう危険性があります。市場規模はしっかりと分析するよう心がけてください。
顧客ニーズは正しく深掘りしていく
顧客ニーズを探り、そのニーズを掘り下げて把握する作業も、顧客分析において欠かせません。顧客が特定の商品を選ぶ場合、そこには必ず理由があります。その理由や傾向を明らかにすることこそ、顧客ニーズ把握の第一歩です。
顧客ニーズを把握するためには、顧客による商品やサービスのレビューが参考になります。商品やサービスに対する評価だけでなく、企業やブランド、販売チャネルに対する評価にも注目してみてください。
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購買プロセスまで目を配る
顧客が商品をどのように認知し、購買するのかという購買に至るまでのプロセスも意識することが大切です。Web時代からSNS時代へと移行したことによって、顧客を取り巻く環境や顧客の購買行動も日々変化し続けています。
一般的な消費者の購買行動モデルを、自社の顧客の購入プロセスと比較することで、顧客分析の新たな発見ができるでしょう。
顧客分析の効果を高めるために注意したいこと
顧客分析の効果を最大限高めるために注意すべきことをご紹介します。
目的に沿った仮説検証を徹底する
顧客分析で重要なのは、顧客分析を行う目的を明らかにした上で分析を行うことです。顧客分析をしただけで満足してしまっては、売上向上には繋がりません。効果的なマーケティング施策を展開するためにも、仮説を立てたうえで分析し、出た結果から行うべき施策を検討する必要があります。
顧客ごとに合わせたアプローチに繋げていく
顧客分析を通して売上アップを目指すためには、顧客の購買行動に合わせて適切にアプローチすることが大切です。アプローチすべき顧客層が把握できていたとしても、アプローチ方法やコミュニケーション方法を誤ってしまうと、顧客離れの原因になりかねません。
電話やメールだけでなく、LINEやSNSなど、様々なコミュニケーションツールに対する需要が高まっていることから、できるだけ多様なコミュニケーション手段を採用し、顧客自身が選択できるような環境を整えることが大切です。顧客目線で考え、寄り添うことで、継続的な関係性を構築でき、結果として売上アップに繋がります。
まとめ
顧客分析の概要や具体的な分析手法について詳しく解説しました。顧客分析を基にした経営戦略によって、売上や業務効率が向上した事例は多数存在します。顧客分析の方法は多岐に渡り、どれも複雑なプロセスではありますが、SFAやCRMなどのITツールを活用することで、効率的に顧客分析を実現できるでしょう。
ご紹介した様々な顧客分析方法を活用しながら、自社の顧客に対する理解を深めていくことをおすすめします。
関連資料:お役立ち資料 顧客マネジメント 『顧客マネジメント』で重要なお客様との関係性をマネジメントする
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